脱原発世界会議での宮台真司さんのスピーチが素晴らしかったので書き起こしました。

宮台さんのことを、バリバリの右翼で上げ潮派だと思っている人も、単なるエロ社会学者だと思っている人も、宮台真司?なにそれ美味しいの?と思った人にもぜひ読んで欲しいです。社会学者の立場から述べられた脱原発に対する意見です。

 

 

えー、僕はここでですね、”原発をやめること”に合わせて、”原発をやめられない社会をやめること“を提案したいと思います。

何故ならば、原発がやめられない理由は、原発が技術的に合理的だからではありません。
原発をやめられない理由は、巨大電力会社の地域独占供給体制を維持するためです。

具体的に言うと、こういうことになります。

日本の政治は今、大変に問題を抱えていますね。日本はですね、どこの先進国よりも最も少ない公務員の割合です。どこの先進国よりも最も低い福祉予算の割合です。ま、アメリカと並ぶくらいですね。そして、どこの先進国よりも最も政府の債務、借金、GDP比で言うとこれが最も高いんですね。それは何故かというと、未だに補助金行政をやっているからです。

補助金行政とは何かというと、特別措置法を作り、特別会計を確保し、金をばら撒く為に特殊法人を作って、大量の天下りの座席を確保し、そしてこれを業界にばらまくんですね。業界はまるで餌をねだる金魚のように口を開けて補助金を待っている。これは金の切れ目が縁の切れ目ですので、縁が切れると天下り先もなくなりますから、役人たちは特別措置法の延長延長延長…その結果、特別会計は、国会の審議を経ないで固定された予算になってしまっているんですね。

で、実は原子力もそうした流れの中にあるわけです。つまり、自分たちが、私達が、原子力発電をやめられない理由は、日本の政治が病的な状態にある理由とほとんど同じだと言う風に断言して差し支えありません。

脱原発・自然エネルギー化はですね、これはエネルギーの共同体自治の問題です。それはちょうど、スローフードが食の共同体自治の問題であるのと同じです。ところが日本では残念ながら、スローフードというと、オーガニックなものを食べることや、トレーサブル(追跡可能)なものを食べることという具合に、食材選択の問題に切り縮められてしまっています。

放っておくと日本に於ける脱原発も、スローフードと同じように、単なる電源選択の問題に切り縮められてしまいかねません
簡単に言えば、「巨大電力会社さんよ、原子力はもうやめて、集中太陽熱発電にしてくださいね!」とかって、そういう話しですね。

しかしこれでは、残念ながら自然エネルギー化するべき本質的な理由、あるいは、ヨーロッパの国々が自然エネルギー化を通じて達成しようとしている社会の仕組み、そうしたものに我々は永久に到達出来ないまま、オーガニックなものを食べる為に巨大スーパーに依存し、自然エネルギーを使う為に巨大電力会社に依存し続けることになります。

この依存体質が変わらない限り、今度は原発事故という形を取るかどうかは分かりませんが、やはりまた、同じような大災害を我々は経験することになるでしょう。なので、脱原発・自然エネルギー化の問題は、私達が巨大システムにお任せするのを辞めて、自分たちで自分たちをステアリングできるような、自治の社会を実現することと表裏一体であるということをですね、お話ししたいと思いました。以上です。

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